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Reversi-Love#93~魂の慟哭~

 
Reversi-Love_093.jpg 
 
福田は春奈に食事を摂るように促してから、話し始めた。

「シロチョーの奥さんの頼子とは、看護学校からの親友だったの。同じ病院に務めて。」

福田も膝の上においたお弁当の蓋を開け、おかずをつまみ始めた。

「仲良かったのよ。私達。それこそ姉妹のように。彼女が先輩であるシロチョーとの結婚を機に、病院を去るまではね。」

福田は意味深なため息を漏らした。そして、正面を向き、話を続けた。

春奈はおにぎりを持ったまま口にはせず、その横顔を見ている。

「私はその頃ちょうど主任になったばかりで、毎日の業務に忙殺されていて、次第に縁遠くなってしまったの。」

春奈はおにぎりを持った手を、膝の上にそっと下ろした。

「まあ、シロチョーの結婚してからの太りっぷりをみていれば、幸せに暮らしているんだなってのはわかったし、いつでも会えるって、そう思ってた。」


「そう思って、一年が過ぎ、二年が過ぎ。気がつくともう何年もあっていなかった。もう頼子のことは忘れていたある日、子供を授かったってシロチョーが大喜びで話して回っているのを、遠目で見ていた。正直、動揺した。私、こんなところで何をやっているんだろうって。」


福田はもう食べる気がなくなったのか、箸をおいて話し続けている。

「夜勤明けでそのまま日勤までして、フラフラしながら寮に帰っている途中、街中で車が何かにぶつかる音と、悲鳴が聞こえて。事故だって思って駆けつけたら、そこに血まみれの頼子がお腹を抱えて倒れていたの。」


春奈が息を呑む。

「頼子に駆け寄った。頼子も私に気がついて、手を精一杯伸ばすの。そして私の手をギュッと握って、赤ちゃん、お腹の赤ちゃんを助けてって。」

その時の事を思い出しているのだろう。福田の顔が苦痛に歪む。

「出血もしていたし、多分赤ちゃんは助からないと思った。それでも頼子が無事なら、まだチャンスはあると思ってた。」

春奈は泣きそうな表情で福田の横顔を見つめている。

「ちょうどクリスマスでね。周りの人は浮ついた感じで通り過ぎていく。私は頼子を抱えて真っ赤に染まりながら救急車を待つの。でも、渋滞で救急車はなかなか来ない。やっと車が到着した時は、頼子はレベル300(意識なしの状態)だった。」

「看護師が行える医療行為は少ない。でも、私はそんな事なんてもう考えられなかった。ただ、頼子を助けたくって、医療行為を行ったわ。救急車の中で。でも、頼子の呼吸がだんだん弱くなって。でも、道は渋滞。受け入れてくれる病院は見つからない。医師が、いないのよ。クリスマスだからかしらねっ」

福田は吐き捨てるようにそう言うと、一層顔色が険しくなる。

「私達はすべてのものから見放された。そして目の前でだんだんと弱くなっていくの。命の灯火が」

「・・・」

「動かない車の中で、頼子は息を引き取ったわ。シロチョーはその頃緊急オペで。何時間も後に駆けつけた時の彼の姿が忘れられない。魂の慟哭。心の奥底からの咆哮。救命医であるにもかかわらず、一番身近な人間を助けられなかったというやり場のない怒り。そして、悲しみ。すべての感情のベクトルが、己の内に向かっていた。」

そこまでしゃべると、福田は目を閉じ、まるで心を落ち着かせるかのように深呼吸をした。

そしてゆっくりと目を開く。

「あの日からシロチョーは変わった。何かにとりつかれたかのように、お金をかき集め、政界へのパイプを作り始めた。」

福田は少し考えた後、春奈の方を向いた。

「葛西さんは、シロチョーのことどう思う?」

「素晴らしい、尊敬すべき医師だと思います。でも、間違ってます。」

春奈は間をおかず言い切った。

福田が柔らかく笑う。

「そうね。あの人は医師の中の医師だと思う。そんなあの人が、今の医療を変えようとしている。私がそれについていかなくて、誰がついて行くというの?間違っているのはシロチョーが1番わかっていると思う。でも、私には止められない。止める権利も、資格もない。」

福田は思いつめた様子で、再び前を向いた。そして沈黙が続いた。


「師長・・・。話してくださってありがとうございます。」

「ううん。こちらこそ、きいてくれてありがとう。わたし、もう誰かに話してしまいたかったのかもしれない。シロチョーと共に堕ちる覚悟はあったのだけど、シロチョーが堕ちていく姿を見る覚悟は無かった。」

福田の声が弱々しいなっていく。

「もう、自分を黒く染めて鬼の形相で修羅の道を逝くあの人を見ていられない・・・。私達、頼子とシロチョーと私。どこで間違ってしまったんだろう・・・。」

そう言うと顔を手で覆って、肩を震わせた。

春奈は福田の肩に手をおき、やさしく話しかける。

「大丈夫です。祐介先生と、とお…黒羽先生がなんとかしてくれます。」

「葛西さん・・・。そう、そうね。息子代わりの黒羽先生が話してくれれば、シロチョーも思いとどまるかもしれない。今、シロチョーは徹底的に黒羽先生を避けてる。きっとわかっているんだわ。黒羽先生が自分のアキレス腱だって。」

春奈は突破口を見つけた気がした。

それは小さい一穴かもしれないが、蟻の一穴となるかもしれないと思った。

「師長、あともう一つ教えてください。シロチョーは何かの病気なんですか?」

福田が顔を引きつらせながら春奈に向かって聞く。

「な・・・に?それ・・・。」

「あ、いえ。気にし過ぎかもしれないんですが、シロチョーが言った"先の短い自分が手を汚す"っていう言葉が気になって。」

福田の顔から血の気が引いていく。

「聞いて・・・な・・・い。」

「ごめんなさい。きっと私の思い過ごしなんです。気にしないでください。」

春奈は笑いながら否定した。

しかし福田の表情が晴れる事は無かった。






おはようございます。まぬかんです~
2日もお休みしてしまってごめんなさい~っっ
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