Reversi-Love#33~離さない~

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春奈は換えのシーツを黒羽に向かって投げつけた。

「携帯、返してください。」

手を胸の高さまであげ、携帯を返すように要求するその目には、涙が溢れてこぼれ落ちそうになっている。

携帯を受け取ると通話状態になっている事を確認して、黒羽に背中を向けて話し始める。

「祐介先生、今日は行けません。ごめんなさい。」

それだけ伝えると祐介の返事も聞かずに電話をきった。

春奈の背中が静かに怒っている。

そう黒羽は感じた。

「わかってます。」

春奈は冷静を装いそうつぶやく。

でも、声は震えており、まったく冷静さは感じられない。

「祐介先生が私の事好きじゃないことぐらい、わかってますっ。」

黒羽は黙っている。かける言葉が見つからないでいる。

「祐介先生は、私の事を可愛いって言ってくれても、好きとか愛してるとかは一回も言ってくれません。祐介先生の心にはいつだって別の女性がいるし、祐介先生からもココロは欲しがるなって言われてます!」

「・・・」

「でも・・・好きなんです・・・。どうしようもないんです。」

手で顔を覆い涙を流す春奈を後ろからギュッと抱きしめる。

「葛西。好きだ。」

「・・・」

「お前のことを、13年前から愛してる。」

「・・・」

「お前を護りたいとあの日屋上で思った。だから俺は医者を目指した。お前に寄り添って癒してやりたいと思った。」

春奈を抱きしめる手に力が入る。

「葛西。俺のこと、好きになれよ。」

「・・・」

「俺はお前のことを泣かせたりしない。大切にする。だから、俺のものになれよ。」

---ココロの隙間に入ってこないで・・・。

「俺は、お前が好きなんだ。」

---っっ。

黒羽は春奈の腕を掴み、体を反転させる。

春奈の目の前に、真剣な表情の黒羽が迫る。

「葛西、愛してる。俺の事、好きになれ。」

そのまま春奈の唇に自分の唇を重ねる。

---優しいキス・・・でも・・・


春奈は黒羽から離れようと体を硬くするが、それに気づいた黒羽が春奈を抱く腕にチカラを込める。

「・・・はなし、てくださ、い」

「離さない。もう、二度とお前を離さない。」

「そんなこと、言わないでください・・・」

「お前がやめろと言っても、俺は何度だって言う。葛西、愛してる。俺の事好きになれ。」

「・・・」

「大切にする。お前だけを見てる。」

「クロ・・・くん。」

「ハル・・・ちゃ・・・」

黒羽は再び春奈と唇を重ねた。

春奈も今度は目を閉じて黒羽に応える。

柔らかい唇の感触が2人に伝わる。

一旦唇を離し春奈の目を見て意思を確かめると、黒羽は先程とは打って変わって、激しく春奈の唇を奪った。

唇を割って舌を入れると、春奈の舌を求め絡ませる。

熱い舌が絡み合うたび、くちゅくちゅと音が響く。黒羽は春奈の舌を吸い上げ、舌先でなぞり、再び絡ませる。

黒羽の想いをぶつけるような、情熱的なキスだった。

---俺がお前の中の祐介を全部消してやる。

黒羽は春奈を抱き上げ、ベッドへと運び、優しくおろした。

そして春奈の顔の横に手をつくと、顔にかかった髪の毛を梳きながらキスをした。

「いやか?」

「・・・ううん。クロくん、抱いて。私を抱いて。」

目を潤ませながら、まっすぐに黒羽を見て答えた。

黒羽は少し寂しそうな笑顔を浮かべながら、春奈の細い首筋に舌を這わした。

---俺は結局こいつに想いを押し付けて、無理させているのかもしれない。でも・・・俺はもうひけない。


黒羽の舌は首筋から鎖骨に向かって降りていく。その感触に春奈は顎をあげる。

---クロくんが私を欲しいというなら、私はすべてを差し出す。クロくんのお父さんを殺したのは私だし、クロくん自身の人生も変えてしまった。

黒羽の手が止まる。

「泣くなよ・・・」

「え・・・?」

黒羽は起き上がりベッドのふちに腰掛けると、自身の前髪に指を絡ませかきあげた。そして深いため息をつく。


「私、泣いてなんかないよ?」

黒羽は春奈を一瞥すると、革のジャケットを手に取り部屋を出て行った。

しばらくするとバイクの音がして、遠ざかった。

黒羽の部屋に取り残された春奈はベッドに横たわったまま目に手の甲をあて、しばらく動かなかった。
 
 


おまけ:「続きを読む」の中身です。(開いている場合があります)





サイドストーリー~黒羽編~



屋上に親父が助けた女の子がいるというので、俺はそっちへ向かった。

誰も知らない親父の最期を知っているのは彼女、葛西春奈という中学生の女の子だけだからだ。

しかし、彼女はショックからか、心に傷をおって、今はしゃべれる状態にないらしい。事件を思い出すような事はしゃべらない方がいいと、彼女を担当している医師に言われていた。

それでも姿を一目見たいと思い、屋上に来た俺はあたりを見回した。

「ハルちゃん、いい天気ねぇ。」

看護師の話している声が聞こえる。

いた。あの子だ。

その憂いを帯びた表情に俺は目を離せなかった。

看護師がハルちゃんハルちゃんと連呼しているが、当の本人には届いていないようだった。

君は、ちゃんとこの世界にいるのか?

君の目には何が映っているんだ?

君は空を見上げて、涙を一筋こぼした。

それで、つい、声をかけてしまったんだ。

「泣かないで…ハルちゃん」

何でハルちゃんなんて言ったのかわからない。

でも、彼女の泣いている顔を見るのは切なくて、俺はどうにか泣き止んで欲しくて…。

でもどうすることも出来ず、ベンチに座って空を見上げる。

切ないぐらいに、空が青い。

君の目にも僕の目にもこの空の色は悲しい色に見える。

これ以上この空を見上げたら、俺も泣き出してしまいそうで…。

そんな時、彼女の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。


ハルちゃん…。君には笑ってほしいよ。もう、泣かないで。

「泣かないで…。ハルちゃん。」

俺はこの瞬間恋に落ちたんだと思う。

君の為になにかしたくて、俺は医者になる決心をした。



「はぁ?今から医者を目指す?」

祐介が驚いた顔で俺を見る。

そして俺が冗談を言っているのでは無いとわかると、ニヤッと笑った。

「またしばらく一緒だな。」

祐介が笑う。

俺もつられて笑う。



親父が亡くなってから、たびたび俺の家に祐介が遊びにくるようになった。

こいつはこいつで俺の事を心配してくれているのかもしれない。

気恥ずかしいような、背中がくすぐったいような気持ちになる。

ありがとな、祐介。お前が友達で本当に俺はうれしいよ。

そんな事本人には口が裂けても言えないが、俺は心の中で祐介に感謝した。


急な進路変更だったが、もともと理系クラスにいた為、なんとか受験に間に合った。

合格発表の日。

俺は所用で発表を見に行く事ができなかった。後でネットで確認すればいいと思っていた。

そんな時、祐介からメールの着信があった。

『番号、あったぞ。』

第一志望は祐介と同じ大学だった。ついでに見てくれたんだ。

合格した実感がメールを通して溢れてきた。

と、感慨にふけっていたところ、携帯が鳴り、中断された。

は?祐介?

「クロちゃーん。合格おめでとうー。」

こいつまた俺の事ちゃん付けで呼びやがって。

「ったく。電話してくるんだったら、メールいらないだろ?」

嬉しい気持ちを隠して悪態をつく。

「いいんだよ、こういうのは。これから6年間、また一緒だな。よろしくね、クロちゃん。」

「ちゃんっていうな。」

そう言ってから、俺は一呼吸おいてクチを開いた。

「ありがとな。いろいろ。」

「はぁ?何、急に。わけわかんない。」

お互い気恥ずかしい気持ちで電話を切った。

ハルちゃん、今君は何をしてる?

どうか君が笑顔を取り戻していますように。

君にとって安らかな日が訪れていますように。

俺は携帯をしまい、歩き出した。





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